ただ一つのメニュー
 「いらっしゃいませお客様!!ようこそ我がスペシャルレストランへ!!本日のオススメメニューはなんと!!特製グリルチキンハンバーグステーキとなっております!!」

 「おいおい随分と定番だな…他のメニューはなにがあるんだい」

 「他にメニューはございません」

 「ねぇのかよっ!!」

 「そうです。かわりに当店では”明日のメニュー”をお選び頂くことができます」

 「……”明日のメニュー”?お前、俺が明日も来るかは分かんねえだろうが」

 「いかにも。ですからこれはいらして下さったお客様全てに平等に権利があります。例えばあるお客様がカレーがいいと言い、あるお客様がうどんがいいと言った場合にはカレーうどんになることもあります。その日のお客様の意見を全て取り入れた、スペシャルな料理が翌日に出来上がるという訳です」

 「ほお。面白そうじゃねえか。じゃあ俺の選ぶ明日のメニューは……カツ丼だ」

 「おおカツ丼!!また乙なものを!!明日はなにか勝負事でもあるのですかな?」

 「いや……ほんとは今日が勝負なんだがな。こちとら人生を賭けた大告白への道すがらなんだ。少しでいいから願をかけておきたいってだけさ。まぁ、もし告白に成功したら、そのまま新婚旅行にでも洒落込むつもりなんだ。だから明日来ることはなくなっちまうが」

 「なんと!!そういうことでしたか……それは誠に申し訳ないのですが、本日は特製グリルチキンハンバーグステーキがメニューとなっておりまして……」

 「あぁ、構わねえよ。美味ければな」

 「ふふふふふ!!味の方は保証させて頂きましょう!!では少々お待ちくだされ!!!!!」

 そして翌日。

 「いらっしゃいませお客様!!ようこそ我がスペシャルレストランへ!!本日のオススメメニューはなんと!!特製グリルチキンハンバーグステーキとなっております!!」

 「変わってねえじゃねえかっっっっっ!!!!!」

 「ふふふお客様、実は昨日のメニューが大層評判でして……」

 「ほお…じゃあおとといのメニューはなんだったんだ」

 「特製グリルチキンハンバーグステーキですね」

 「お前それしか作れないんじゃねえかっっっっっ!!!!!」



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