爆弾とリア充

　「あーっ、ごめん待ったー！？」
　小うるさい声。化粧の濃いギャルが男と挨拶している。本来、こういうところは好きじゃないのだが、俺は今待ち合わせをしている人々で埋めつくされている、ハチ公前にいる。残念だ、あの女がもう少し遅く来れば粉々にしてやれたのに。

　俺は、ここに時限爆弾を仕掛けた。

　セットした爆破時刻は午後３時。現在時刻は午後２時５０分。あと１０分したら俺も巻き込まれてしまう。別に、それで死んでもいい。もう俺にも解除できないようにしてある。ただ、俺にはやり残したことがあった。

　好きな女の子を、ここに呼び出してある。

　その子に告白し、その結果OKならまだ生きてみようと思う。ダメだったらその時はこのむかつく街の連中に一泡吹かせて一緒に死ぬ。そう、まさに命賭けで俺は彼女を待っている。彼女はメールで、ごめん１０分くらい遅れるかも！ほんとごめん（＞＜；）などと来ていたので、少しまずいな…と思っていた。

　待ち合わせしていた時間は二時。

　……おいいいいいいいいいいいいい！！！！！まだかぁああああ！！

　彼女に告白した結果で生き死に決めようとか思ってたのにそれすら叶わないで死ぬかもしれん……このままだと彼女が爆発に巻き込まれてしまうかもしれないし、彼女がどっちの方角から来るかも分からないから俺もここで待つしかない。彼女が来たら「とりあえずご飯でも食べよっか！」などと無理やり連れていくしかないか……。
　時間は２時５５分を回ってしまった。
　まずい。まずいまずいまずい！！！

　「あー、ごめん待ったー！？」

　またあのこうるさい声が聞こえた。あれ？あのギャル、さっきも同じ事言ってなかったか……？見ると違う男を連れてどこかに連れ立っていった。あれ、１０分かそこら前だったよな……その間になにを……いやナニを？いやいやそんなことはどうでもいい！もう時間がない！！既に秒読み態勢に入った！！彼女はまだか！！

　「あ、ごめん待ったー！？」

　彼女が来た！そのセリフで来るのだけは避けて欲しかった！！時間は２時５９分５５秒、彼女はこちらに向かって走ってきたが、俺は彼女に向かってさらに速いスピードで駆け出し、彼女を守ろうとタックルするような勢いで押し倒した！

　数秒後。

　起こる筈の爆発は起こらなかった。何故だ？あれ？初めて作ったからなにかミスってたのかな……。

　「ちょっと……重い……」
　「あ、ごめん！」

　３時を過ぎたので彼女を起こし、面と向かって告白した。彼女は公衆の面前でいきなり押し倒したせいで恥ずかしそうだったが、OKしてくれた。俺はこの世界で一番幸せなんじゃないかと思う程嬉しかった。

　ピッ、ピッ、ピッ。

　設定していた時間がずれていた爆弾は、俺がリア充になった瞬間爆発した。
　


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