どこまでも続く快晴

 今日も快晴だ。だがどんなに空が綺麗に晴れていても、社会不適合で引きこもりな俺は家から出ない。まぁ、昔より外に出るのが大変ではあるが。
 パソコンを起動し、いつも通りオンラインゲームをスタート。これでも伝説のプレイヤーと呼ばれていたんだ。俺は日常の幸せを噛み締める。

 ギルティア【おはー(>_<)今日もいい天気だね】
 たっくん【我に気安く話しかけるでない痴れ者が】
 レベッカ【あはっ☆その言葉使いはそのニックネームじゃ締まらないってば、たっくんww】
 たっくん【黙れ。本来我と会話が許されるのはロータス姫だけだと言っているであろう下郎が】
 ろーたす【そのくらいにしておきなさいたっくん】
 たっくん【はっ姫!そんなところにいらしたのですか…気配断絶はやめていただきたいとつねづね申し上げておりますのに…】
 ろーたす【よきに】
 ギルティア【あぁ…また二人の世界始まっちゃったww】

 世界10億人がプレイしているこのゲームで、俺たち四人は最も有名なパーティだった。賞金首という賞金首を狩り尽くし、プレイヤー同士の戦いでは連戦連勝。今日もイベントで組まれたふざけたパラメータの敵を狩りに行くところだ。他に居場所のない俺にとってここは友との交流の場でもあり、全てだった。

 この世界では、誰もが部屋にこもって生活している。

  20xx年、突如地球に大量の隕石が降り注ぎ、地球の半分が根こそぎ壊滅した。そしてその衝突により地球の公転軸は太陽から少し遠ざかってしまい、地球の平均気温は3℃減少した。それにより人類は暖房器具を用いた屋内での生活を余儀なくされ、外出する際は特殊な防寒スーツに身を包むことが義務付けられた。しかも、軸がずれたことにより太陽の引力圏から引き離され、地球は少しずつ太陽から遠ざかっている。
 今日は快晴。太陽の恩恵が少ない地球は、逆に雨が少なくなり、晴れの日が増えた。
 その現状を打破する為の計画を各国が急ピッチで推し進めていた。特に大きなところでは、人類火星移住計画が有名で、日本ではその第一期先遣隊を乗せたスペースシャトルは先日打ち上げられたが…あまりに短い期間で作られたシャトルは、宇宙空間にてトラブルに見舞われたらしく、選ばれた乗員は全て帰らぬ人となった。

 イベントの敵は強かった。運営の気合の入り様が伺える。このゲームにこんなにも人が集まる理由は、最終ボスやイベントのボスなどを倒した時に与えられる高額のリアルマネーによる賞金が与えられることだろう。そしてこのイベントボスにも多額の賞金がかけられている。だからこそグループで組む奴は多いが、トラブルも多い為俺たち四人の様に創生期からつるんでうまくやっている例は少ない。俺たちのルールは簡単で、賞金はいつも均等に山分け。今回の賞金も中々に高額で、みんながしばらくはなにもせずに暮らせる程度だった。
 丸一日程かけてボスを倒し、賞金を受け取ったところで俺は言った。

 たっくん【皆聞け。我は今回の賞金を受け取らない】
 三人【な…!?】
 たっくん【もう我はこのゲームから降りなければいけないのである。貴様らの言は聞く耳持つ暇もない。その賞金が、せめてもの別れの贈り物と思うがいい】
 ろーたす【ちょ…ちょっとたっくん!なんで!?ずっと一緒にやっていこうって言ってたじゃない!】
 たっくん【姫…そなたのことは忘れない】
 ろーたす【ちょっと待ちなさ】接続を切断。

 仮想世界の住人との別れは一瞬だ。一瞬の切なさも忘れ、頭を切り替える。俺は行かなければいけない。

 懲りない日本は第二期先遣隊を設置。またも急ピッチでシャトルが作られているらしい。その危険さはみな理解していたが、地球の追い詰められた状況から、避難の声も大きく出ることはなく、庶民の中から強制的に先遣隊のメンバーが選ばれた。
自殺しにいくようなものだ。そんなメンバーに選ばれた俺は防寒スーツに身を包み、集合場所へ集まった。
先遣隊の仕事は、インストラクターの青年の講義から始まった。

 「選ばれし庶民の皆さん、よくぞお集まり頂きました。無事火星へと移住が完了すれば、あなたがたは英雄として称えられるでしょう。地球を見捨てる覚悟はしてきましたか?」
 


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